卵管鏡下卵管形成術とは?
不妊症の女性側の原因の中で、卵管因子(卵管閉塞、狭窄)は全体の31.2%を占めています。この卵管因子に対する手術的治療は、卵管鏡下卵管形成術(以後FTと略す)、腹腔鏡下卵管形成術など上げられます。その中でも、FTは子宮筋層に近い卵管間質部閉塞に適応があり、また低侵襲の治療であることから数多く行われています。
FTの仕組みは、まず子宮の中にFTカテーテルという器具を挿入し卵管鏡で卵管口(卵管の入り口)を確認します。
その後にバルーンといわれる管を加圧しながら閉塞部位を押し広げていきます。さらに卵管内腔の観察を行い、卵管通過性を回復させます 。
FTの仕組み
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カテーテルに卵管鏡をセット
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卵管鏡で卵管口を確認する
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バルーンを加圧して、閉塞部位を押し広げていく
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卵管内腔の観察を行い、卵管通過性を回復させる
卵管内腔の画像と
通過性の回復
FTカテーテルによる卵管形成術を行った後に、バルーンを引き戻しながら卵管内を連続的に観察することが可能です。卵管内腔のヒダを観察することで、卵管の機能評価が可能となり、手術後の不妊治療計画にも役立ちます。
卵管内腔の画像

術後卵管通過性回復の確認

FTの特徴
通常、両側卵管閉塞ではすぐに体外受精の適応となります。しかし、まずFTを行い卵管の通過性が改善出来ると、自然妊娠の機会を提供できるばかりか、健康保険適応で患者様の経済的負担を軽減することが出来ます。当院では、より安全にFTを行うために、腹腔鏡を併用したFTを行っています。
そのため、数日の入院を必要としますが、退院後の安静や休職は基本的に必要ありません。
治療成績
一般にFTにより80%以上の卵管通過性回復を認めますが、術後1~3ヶ月後に約10%の症例で再閉塞することもあります。治療後の妊娠成功率は、文献的には治療後2年以上経過した症例の検討では約30%に妊娠が成立し、妊娠成立までの期間は平均7.8カ月、妊娠例の87%が治療後1年以内の妊娠であることから、術後1年経過しても妊娠しない場合には体外受精などへの治療への移行が必要なこともあります。